アメリカ公共政策大学院の授業⑥:国際紛争の仲介と合意形成方法


今回も前回に続いて、私がアメリカのブリッジポート大学の公共政策大学院で学んでいる、「国際紛争と交渉」の授業内容についてご紹介します。

前回までの記事は下記の通りですのでご一読ください。

 

アメリカ公共政策大学院の授業①:「文化と開発」

アメリカ公共政策大学院の授業②:ルワンダの虐殺と紛争メカニズム

アメリカ公共政策大学院の授業③:紛争分析のフレームワーク

アメリカ公共政策大学院の授業④:ハーバード流交渉術を徹底解説!

アメリカ公共政策大学院の授業⑤:ハーバード流交渉術の続編解説!

 

今回は、これまでテーマにしてきた「紛争」「交渉」を総合したような内容になります。その名もズバリ、「紛争交渉における仲介者の役割」です。

 

仲介の目的

紛争交渉においては、紛争の当事者だけでなく、それを仲立ちする第三者の存在がとても重要です。

現在進行形で殺し合いをしている当事者同士が話し合いをしようというのですから、第三者の介入なくしてはうまくいくはずがありません。

逆に、仲介者側には一般的に、仲介を買って出る3つの理由があります。

1つ目は人道的目的で、これは一般市民からの声に後押しされる形で仲介をします。

2つ目は戦略的目的で、自国の属する地理的な事情や安全保障のために、仲介役を買って出るパターンです。

3つ目は評価の目的で、国際社会からの評価や、自国のプレゼンスを高めるために仲介役になります。

一般的には、政治的野心で紛争の仲介を買って出るべきではないとされていますが、実際のところ、純粋な動機でどこかの国が仲介役になることはまれです。

 

仲介者の心得

いざ、仲介役を担うこととなった場合、仲介者が気を付けるべきことが6つあります。

1つ目は良き選択肢を守ることです。紛争当事者双方に信頼関係がない場合、仲介者から見てベストだと思われる選択肢を自ら台無しにしてしまう可能性があります。ですから、仲介者はその選択肢を少し形を変えたり見せ方を変えたりしながら、合意形成のオプションの中に残し続けなければなりません。

2つ目は破壊的な態度に気を付けることです。交渉の場に来ている人たちが全て、必ずしも何かの合意形成に至りたいと思っているわけではありません。中には、交渉を台無しにすることを目的に来ていてる人もいて、彼らはスポイラー(Spoiler)と呼ばれています。彼らはわざと緊張を高めるような態度を取ったりするかもしれませんが、仲介者はそのような挑発に乗ることなく、交渉の場に一体感を作り出せるよう努力しなくてはいけません。

3つ目はそのポイラーに上手に対処することです。悪意ある参加者を早い段階で特定し、できるだけ合意形成の場から引き離す必要があります。

4つ目は膠着状態を打破することです。交渉が暗礁に乗り上げるようであれば、外部の専門家の活用や、他のプログラムと連動させるなどして刺激を与え、状況を好転させられるよう努力する必要があります。

5つ目は、仲介者が国であれば、国内からの支援を維持することです。仲介者は、仲介役をすることがどのように自国にとって利益があるのか、どのように進展しているのかを伝え続け、自国民から愛想をつかされないように気を付けなくてはいけません。自国民が関心を失えば、仲介者としての立場を維持することはできないからです。

6つ目は、全てのカギはタイミングであると言うことを理解することです。合意形成にもタイミングがあります。時が熟していないと感じれば、双方が戦闘に疲れ果てるまで待った方が良い場合もあります。時には何かの記念日などをうまく活用することで、合意形成に拍車をかけられる場合もあります。

 

合意形成と合意内容の履行

次に、合意形成に持っていくためのポイントです。

合意形成には、必ずしもすべての争点が含まれている必要はありません。というか、全てのことで合意が取れるケースはまれです。

ですから、仲介者は常に双方に公平に接しながら交渉を進め、双方が満足する合意形成までもっていき、さらにその合意を実行するためのロードマップまで準備する必要があります。

実は、合意形成よりも合意内容の履行の方が問題になる場合があります。そのために、軍事力や経済制裁などを使って、履行を守らせる必要があります。

また、合意内容の不履行を煽るようなスポイラーがいれば、毅然とした態度で彼らと話し合わなければなりません。

そして、平和構築の第一ステップとして、武装解除と動員解除をおこない、ワークショップや様々なケアを通じて、元兵士が日常に戻れるように促します。

さらに仲介者は、その紛争を取り巻く国際社会の状況から、紛争地域のローカルコミュニティの状況にまで目を向け、合意形成やその履行の妨げになるような動きをすばやく察知すると同時に、協力者を募っていくことも大切です。

 

以上で、今回の授業紹介の紹介にひとまず区切りをつけたいと思います。長い間お付き合いいただき、ありがとうございました。

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