アメリカ公共政策大学院の授業⑤:ハーバード流交渉術の続編解説!


今回も前回に続いて、私がアメリカのブリッジポート大学の公共政策大学院で学んでいる、「国際紛争と交渉」の授業内容についてご紹介します。

前回までの記事は下記の通りですのでご一読ください。

 

アメリカ公共政策大学院の授業①:「文化と開発」

アメリカ公共政策大学院の授業②:ルワンダの虐殺と紛争メカニズム

アメリカ公共政策大学院の授業③:紛争分析のフレームワーク

アメリカ公共政策大学院の授業④:ハーバード流交渉術を徹底解説!

 

今回は、前回ご紹介しました「Getting To Yes」の続編ともいえる、「Getting Past No」(ウィリアム ユーリー)をベースにして、ハーバード流のNoと言わせない交渉術をご紹介したいと思います。

実際のところ、前回の記事と重複する内容もありますが、参考にしていただければ幸いです。

 

交渉におけるパラダイムシフト

さて、交渉というのは誰にとってもストレスを感じる行為です。しかしここで、その見方を変えて、双方が共同で問題解決に取り組む行為だと考えてみてはどうでしょうか?

双方が面と向かって対峙する状態から、横並びに座って同じ問題に向かって対峙すると言うイメージです。

このパラダイムシフトには大きな効果があり、時間やエネルギーの浪費を防ぎ、良き関係を維持することにつながります。

そのためにまず気を付けるべきことは、自分の反応です。交渉中に安易に相手に弱みを見せないように注意しなければなりません。

また、相手の反応にも注意を傾ける必要があります。特に相手が否定的な感情になっているときは決して物事はうまくいきません。

次に、相手の立場にも関心を持ちましょう。相手の態度やこちらに対する拒絶は、相手が立たされている立場ゆえかもしれません。

そして、相手の交渉内容に対する満足度も見極めましょう。相手が不幸になる交渉は良い交渉とは言えません。

最後に、相手の持っているも理解しましょう。相手の権限がどの程度の範囲に及ぶのかということは、交渉過程に大きく関わってきます。

 

本書では上記のような交渉の妨げとなる要因を突破するため、5つの交渉戦略を提案しています。ではさっそくそれぞれを見て行きましょう。

 

バルコニーへ行こう

交渉が暗礁に乗り上げたり、相手からの提案に引っかかったりすると、人は何かと感情的になってしまいます。

その際に最も重要なことは、相手のではなく、自分の感情をコントロールすることです。決して、感情的な状態で何かの意思決定をしてはいけません

ですから、相手の言動にいちいち反応しないようにしましょう。そして、自分が第三者となって、バルコニーから現在の交渉の様子を客観的に見たら、どのように映るかイメージしてみましょう。

また、時間をかけて自分の意見や考えをまとめるのも有効な方法です。時間をかけることで落ち着きを取り戻すことができるからです。

どんな交渉においてもあせりは禁物です。時間を掛けたり休憩を挟んだりして、あなたの感情をコントロールしましょう。

 

相手の立場に立とう

これは、ハーバード流交渉術で何度も指摘されているポイントでもありますが、相手の立場に立って考えると言うことはとても大切です。

そのためには、まずは相手の意見や主張をしっかりと聞く必要がありますし、適切な質問を投げかけて、相手の真の欲求を引き出す必要もあるかもしれません。これまで述べてきた通り、本当の争点は、相手自身も気づいていないところにあるかもしれないからです。

また、相手の主張をこちらが言葉にして繰り返すことで、相手からしてみると、自分の思いが伝わっていると言う安心感を感じやすくなります。「私があなたの立場だったら…」というフレーズを使うことも、相手に安心感を与えるうえではとても効果的です。

また、議論の中では、人は概して相違点について注目しがちですが、もし相手の主張に1%でも同意できる点があるとすれば、まずはその点について「自分も同感だ」ということを伝えておきましょう。

また、使う言葉にも気を付ける必要があります。できるだけ「そう、だから(Yes, and)」という表現を使うようにし、「そう、だけど(Yes, but)」という表現は避けましょう。同じ内容の結論を伝えているとしても、表現からくる印象は全く変わります。

つまり、相手がYesと言いたくなるような雰囲気を醸成することがポイントで、そのためには、あなたが相手の目の前でYesを何度も繰り返す必要があるのです。

 

ゲームのルールを変えよう

交渉を続けていくと、徐々に相手と自分が敵対関係に陥っている、少なくとも相手からそのように見られてしまっていることに気づくことがあります。

敵は倒すべき相手ですから、そのまま交渉を続けていては良い着地点に到達できません。ですので、関係性の再構築が必要となります。

つまり、相手を攻撃するような議論から、共通の利益を探す議論に話をシフトさせなければなりません。

そのためには、Yes・Noでは答えられない質問、例えば「何が問題なのか?」、「どうしてあげたらいいのか?」といった質問を相手に投げかけることが効果的です。

あくまでも、あなたは相手にとって、論破すべき敵ではなく、共に悩み、解決に取り組んでくれる友であり、味方であり続けなければなりません。

 

黄金の橋を架けよう

この黄金の橋を架けるというのは、「孫子の兵法」で有名な中国の戦略家、孫子の逸話の一つで、相手に必ず逃げ道を作ってあげる、または追い詰めてはいけないという意味です。

「窮鼠猫を噛む」とか、「背水の陣」と言った言葉があるように、人は完全に追い詰められると、持てる力の全てを出して相手に立ち向かっていきます。そうすると、追い詰めた側も被害は甚大です。

ですから、相手が追い詰められていると感じないように交渉を進めることがポイントとなります。

例えば、合意形成する際に一方的に結論を出さずに、必ず相手に関わってもらうなどです。そのためには、当然相手の意見を聞き、それを取り入れなくてはいけません。

また、「以前あなたが言っていたように…」といったフレーズを用いることで、議論の展開に相手を巻き込むこともできます。

交渉の結果、合意に達したことについて、必ず相手が、自分で決めたことだという自覚と責任を感じるような結末に持っていきましょう。

また、価格交渉などでは、単純に値段をいくらにするかと言った点に議論が終始しがちですが、実は目に見えない相手のニーズを満たすことの方がもっと重要な場合があります。

目に見えないニーズというのは、例えば相手のプライドであったり、良好な人間関係であったりします。特に、相手の顔を立てると言うのは、思った以上に大切なポイントです。

最終的な合意形成の段階で、相手の目に見えないニーズまでしっかり満たされているかを気に掛けましょう。

そして、交渉のプロセスはシンプルにしましょう。一度に多くの議論を持ち込まず、争点を一つ一つ丁寧に洗い出し、議論を積み重ねていく必要があります。

逆に、一度に多くの議論をしようとすると話が複雑になり、結果として多くの時間を費やすようになります。「急がば回れ」は交渉においても重要な格言です。

 

教育のために力を使う

自分が相手よりも強い立場にあるとき、その力を使って相手をねじ伏せて交渉を終わらせてしまうこともできますし、そういう誘惑にかられることもあります。

しかし、力は決して結論を下すために使ってはいけません。その代わり、力を使って相手を交渉のテーブルにつかせることはできます。

力を使うことで、あなたは相手に対して、自分が味方であると言うことを伝えやすくすることもできますし、両方がWin-Winになれる道があることを教えてあげることもできます。

通常、力の強い側の話を弱い側の相手は聞かざる負えません。であれば、力がある側がうまく立ち回ることによって、これまでに述べてきたような良い交渉を、主導的に形作っていくことができるはずです。

 

以上でハーバード流交渉術の解説は終わりです。

次回は、また別の切り口から交渉のあり方についてお伝えしたいと思います。

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